NISAで商品を売っても、その年に使った年間投資枠は戻りません。翌年以降に再利用できるのは、売却した商品の取得金額に対応する「非課税保有限度額」です。
「売ったお金はあるのに、NISAで買える金額が増えていない」。画面を見ると戸惑いますが、現金とNISAの枠は別々に管理されています。まず、どの数字を見ているのかを分けると整理できます。
この記事は2026年10月時点の成人向けNISAについて、売却後の枠の見方を説明します。特定商品の売買を勧めるものではありません。NISAでも投資には元本割れのリスクがあります。
「年間投資枠」「総枠」「買付余力」は別の数字
| 見る数字 | 何を表すか | 売却後の考え方 |
|---|---|---|
| 年間投資枠 | その年にNISAで買える上限。つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円 | 購入で使った分を、同じ年に売却で取り戻すことはできない |
| 非課税保有限度額(総枠) | 取得金額で管理する保有の上限。合計1,800万円、うち成長投資枠1,200万円 | 売った商品の取得金額分を翌年以降に再利用できる |
| 買付余力・出金可能額 | 取引や出金に使える資金。表示名や反映時期は金融機関による | 現金が使えることと、NISA枠が残っていることは別 |
制度上の限度額は金融庁「NISAを知る」で確認できます。総枠は値上がり後の評価額ではなく、取得金額を基準に管理されます。
なお、売却代金が銀行口座に入る日は、枠の再利用時期とは別の話です。現金がまだ引き出せない場合は、投資信託の約定・受渡・銀行入金の違いを確認してください。
今年の年間枠を使い切っていた場合
以下は仕組みを理解するための架空の例です。手数料などは考慮していません。2026年に成長投資枠で240万円分を買い、そのうち取得金額100万円分の商品を同年中に売却したとします。
- 2026年:成長投資枠の年間240万円は使用済みのまま。売却しても、その年の成長投資枠の残りは0円です。
- 2027年以降:売却した取得金額100万円分を総枠の中で再利用できます。
- 2027年:成長投資枠の年間上限は240万円のまま。売却分を足して340万円になるわけではありません。
翌年に買える額は、年間枠と総枠の両方に収まる必要があります。成長投資枠では、総枠のうち成長投資枠の上限にも注意します。再利用額が大きくても、1年で一度にすべて使えるとは限りません。楽天証券「取引・ルール:非課税投資枠」
今年の年間枠が残っているなら、翌年まで一律に買えないわけではない
もう一つ、架空の例を考えます。2026年に成長投資枠で100万円分だけ購入し、それを全額売却した場合です。ほかの購入・未約定注文はなく、総枠にも十分な余裕があるとします。
この場合、もともと残っていた年間枠140万円は使えます。「売ったら240万円に戻る」は誤りですが、「売ったから翌年まで一切買えない」という意味でもありません。残っていた140万円と、売却で翌年以降に空く総枠を混同しないことがポイントです。
画面のNISA投資可能額には、まだ約定していない注文による拘束額が反映される場合もあります。たとえばSBI証券は、その年の買付代金に加え、未約定注文の拘束金額を差し引くと説明しています。表示が計算と合わないときは、注文一覧も確認しましょう。SBI証券「NISA取引のご注意事項」
戻る総枠は売却額ではなく、取得金額が基準
次の表も架空の計算例です。取得金額100万円の同じ保有商品を、すべて売却するケースで比較します。
| 売却した金額 | 翌年以降に再利用できる総枠 | 損益の見方 |
|---|---|---|
| 120万円 | 100万円分 | 20万円の利益が出た例 |
| 80万円 | 100万円分 | 20万円の損失が出た例 |
総枠が100万円分空いても、80万円で売ったお金が100万円に増えるわけではありません。枠は現金の払い戻しや損失補填ではなく、NISAで保有できる金額の余地です。一部だけ売った場合も、保有全体の取得金額ではなく、売却した部分に対応する取得金額で考えます。金融庁「よくある質問:非課税保有限度額」
また、NISA内で出た売却損失は、特定口座・一般口座の利益などとの損益通算や、損失の繰越控除ができません。枠の再利用と税金の扱いも分けて理解しておきたいところです。国税庁「No.1535 NISA制度」一方、課税口座で上場株式等の損失がある場合は条件が異なります。取引がない年の損失繰越と申告の確認点で、口座区分や継続申告、保険料等への影響を分けて確認できます。NISAの損失を繰り越す方法ではありません。
旧NISAの売却や、使い残した年間枠にも注意
2023年までの一般NISA・つみたてNISAは、2024年以降のNISAとは別枠です。旧NISAの商品を売っても、新しいNISAの総枠を増やす手続きにはなりません。売却による再利用の対象は、2024年以降のNISAで購入した資産です。楽天証券の制度説明
年間投資枠の使い残しも翌年には繰り越せません。たとえば今年のつみたて投資枠を50万円使い残しても、翌年の年間上限が120万円から170万円に増えることはありません。資産運用業協会「NISAについてのQ&A」
使い残しがあることだけを理由に、生活費や近い将来に使うお金まで投資する必要はありません。制度の上限と、家計から無理なく回せる額は別です。
「枠が戻らない」ときに確認する順番
- 口座区分:2024年以降のNISAなのか、旧NISAなのか。
- 表示の名前:年間投資枠、非課税保有限度額、買付余力、出金可能額のどれか。
- 今年の実績:つみたて投資枠・成長投資枠それぞれの購入済み金額と、未約定注文。
- 売却明細:売却金額だけでなく、売却した部分の取得金額。
- 反映時期:金融機関の案内。年末に取引する場合は、受渡日を含む扱いも確認する。
金融機関に問い合わせるときは、「何月に何を売ったか」だけでなく、画面の項目名と、今年の購入額を手元に用意すると話が通じやすくなります。口座番号などの個人情報が見える画面を、公開のコメント欄やSNSへ載せないようにしましょう。
まずは枠の種類を確かめてから、今後使う予定のお金を整理する。その順番なら、表示に戸惑って急いで売り直したり、買い直したりする必要があるのかを落ち着いて考えられます。家計側の整理は生活防衛資金と特別費を分ける方法でも紹介しています。
公式情報確認日:2026年10月27日。国税庁の参照ページは令和8年4月1日現在法令等。その他の参照ページの公表・更新日は確認できていません。個別の取引日程や画面への反映は、利用する金融機関の最新案内を確認してください。

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